| ASTINA is Still alive! |
世紀を越えて作られ、愛されつづけるアスティナ!
意外な事実の発覚
-
アスティナの販売が終了してから何年たつだろう. その名は、遠い過去の物として、人々の記憶から消え去るのか?
ところがどっこい、「アスティナ」と言うクルマは、今でも製造・販売されている.
皆さんは、この事を御存じでしょうか?
ネーミングのバリエーション
-
マツダ党のみなさんなら、御存じの方も多いだろう.
マツダのアスティナは、輸出先によって複数の名前がある. ヨーロッパでは「323F」として売られていたのは
有名な話である.
アジア・オセアニア地域では、日本と同じ「アスティナ」と言う名前で売られていた.
珍しい所では、南米では「アレグロ」と言う名前で売られていたと言う情報も入っている.
よく、楽譜の隅に書かれているこの「Allegro」と言う単語、イタリア語で「ハッピー」を意味するらしい.
アスティナのタフな息子、ランティス
-
私事ではあるが、最近、ランティスを入手した.
アスティナと、ほとんど変わらないボディサイズに、2000ccのV6エンジンを搭載し、NAながら170馬力を絞り出す.
標準サイズのタイヤは、何と205−50−16. このボディサイズ、しかもNAのクルマには、考えられないビッグサイズである.
前後のオーバーハングは、極限まで切り詰められ、旋回時の不要な慣性質量を低減. ボディの空力性能もとことん追求している.
マツダは、このクルマを、ドイツのニュルブルクリンク・サーキットに持ち込み、徹底して走り込み、足回りのチューニングを煮詰めた.
私は、ニュルに行った事はない. が、聞き及ぶ所によると、実に苛酷なコースらしい.
路面は起伏が激しく、道幅は狭く、ブラインドコーナーが続く. ドライバーが受けるストレスはもとより、クルマにとっても
苛酷過ぎ、ヤワなボディのクルマは、何周か走っただけでボディがヤレてしまうと言う.
マツダは、多大な費用と時間を割いて、この小さなFF車に日本トップレベルの運動性能を与えた.
開発チームの方々も、苦労こそしても、大変な満足感を味わったのではないかと思う.
実際に自分の手で操ってみると、まず気になるのが、フロント回りの質量の大きさ.
オーバーハングを切り詰めたにも関わらず、巨大なV6エンジンと、高剛性ボディのおかげで、
車両重量は1200kgある. アスティナよりも、約150kg重い.
この重さのおかげで、コーナーリング初期のステア操作に対して、実際にノーズが向きを変えはじめるまでの、
一瞬のタイムラグに、フラストレーションを感じる.
しかし、一旦旋回がはじまると、粘る粘る! 実に良く粘ってくれる.
重くてやっかいなV6エンジンだが、トルクは厚く、まるでモーターの様に静かにスムースに高回転まで吹け上がる.
正直言って、もっとにぎやかで荒い回転フィールの方が、「スポーツカーを操っている」にはふさわしいと思う.
また、ホイールベースが長いため、直進安定性が高い. 高品質なエンジンと相まって、グランドツーリングカー的な感覚だ.
そう、そこがアスティナと違うのである.
アスティナのエンジンは、雄々しく吠える. 足回りの限界は程々で、現代の高性能FF車と比較すれば、決して高くないが、
そこに、自分で操る楽しみがある.
走りを追求するために無駄な装備は少なく、ダッシュボードには、小物すら置けないが、これはこれで割り切ってしまえば、
何の問題もない.
話がそれてしまったが、、、
マツダは、ランティスに、323Fやアスティナと言う名前を与え、98年の夏まで、海外で販売していた.
いわば、アスティナのタフな息子と言う訳である.
三代目アスティナ、絶賛発売中?
-
はじめて耳にする方も多いだろう. しかし、98年夏、新型アスティナと323Fが世界デビューした.
上位車種のカペラと共通のシャーシーに、初代アスティナと同じ様に5枚のドアを持つボディを乗せる.
搭載するエンジンには、ついに可変バルブタイミング機構が採用された!
だが、その実態は、「ファミリアSワゴン」だった.
フロントセクションは、ファミリアセダンと完全に共通.
兄貴分のカペラゆずりの、多才なシートアレンジ. トランクの容量そのものは小さいものの、トランク床下には、
色々な小物を入れるスペースが用意されていて、狭いトランクを有効に活用できる.
エンジンは、主力の「1500DOHC S−VT」で、130馬力. 1800DOHCで、135馬力.
ずんぐりしたボディの重量は、1500で1150kg、1800だと1270kgもある.(MT車)
我々が求めていたアスティナは、こんなクルマだったのか?
世界のアスティナのエンスー達から、不満が上がったのも無理はない.
初代のあの流麗なウェッジシェイプのボディとは、似ても似つかぬ姿であるし、2代目(ランティス)で
日本の最高水準に達したドライビング性能が、退化してしまったのは実に口惜しい事である.
しかし、「アスティナ」と言う名前だけは、生き残った. これだけでも、奇跡としか言い様がない
素晴らしい事ではないか?
新しいムーヴメント
-
ここ数年、異常な過熱ぶりを見せたRVブームも、そろそろ終わりが見えてきた.
次に何が流行るかなんて、誰にも予測できないだろう. しかし、ホンダとトヨタが、新しい二つの可能性を呈示した.
大人のための後輪駆動スポーティーカー、S2000と、アルテッツァである.
前者は、オープンの2シーター、そして後者は4枚のドアを持つセダンボディと、クルマに興味がない人に
とっては、全然共通点がない様に思える.
そんな両者の共通点は、前後重量のバランスが良い後輪駆動であること. そして、徹底した走り込みテストを行い、
楽しくドライブできる様に足回りのセッティングを徹底して煮詰めている事.
マツダはどうか? ファン・トゥ・ドライブを徹底して追求した2シーターのオープンスポーツ、ロードスター、
そして、世界に誇れる高性能スポーツカー、RX−7と言う、素晴らしい後輪駆動車を持っている.
しかし、アルテッツァに対抗できるスポーティな4ドア車は持ち合わせていない.
スポーティかつ4枚のドアを備えているクルマ. これが重要である. 若い頃にスポーティカーをしたが、
現在は家庭を持ち、家族にとって快適なクルマに乗らざるを得ない世代に、アルテッツァは大受けした.
だからこそ、マツダもスポーティなランティスを復活させても良いのではないか?
マツダがデザインすれば、アルテッツァよりもずっと洗練された美しいクルマができると確信する.
別に、後輪駆動にこだわる必要はないと思う. 前輪駆動でも素晴らしいスポーツカーが作れる事は、
日産のプリメーラ、ホンダのインテグラ・タイプR、そして、ランティスが証明済みだ.
今こそ、マツダがアスティナとランティスで呈示した、コンセプトが再評価されるべきだろう.
マツダさんには、ブレマシーをたっぷり売って体力を取り戻してもらい、全世界に対して挑戦状を
叩き付ける様な、新しいコンセプトのクルマをふたたび造り出して欲しいと願う.
幸いな事に、「アスティナ」という名前が21世紀まで残る事は確実になった.
21世紀の新型アスティナが、どのようなクルマになるのか? 今から楽しみである.
1999年5月 文責:中原 久
Authored by
Hisashi Nakahara, 1999